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助川農園「親バカトマト」の一年

年間サイクル親バカトマトは、年間を通した自家製堆肥作り土作りから始まって、8月のお盆明けの残暑に苗を植え、水やりや病害虫の管理作業等をしながら、11月の秋も深まるころ収穫が始まり年を越し、春に美味しさと収穫の最盛期を経て、7月の梅雨が明けるころ収穫が終了となり、後に残った木の後片付けをし、次作のために土を休ませ、そしてまた新たな一年が始まっていきます…

 

0.堆肥作り〜自家製モミガラ堆肥を作っています

堆肥作り

トマト作りで最も大切なのは、土作りです。
その土作りには有機物たっぷりの良質な堆肥は欠かせません。
堆肥は土をフカフカにして、土の中の微生物環境を整えくれます。堆肥は牛ふんや鶏ふんなどの動物性のものや、パーク堆肥などの植物性のものがありますが、助川農園では植物性堆肥の中でも、身近で米作りで出る「モミガラ」を使って自家製の堆肥を作っています。
熟成モミガラ

前年度に作った熟成したモミガラ堆肥を少し残しておき、それを種にして、秋の稲刈りで出たモミガラを約1年間熟成させ堆肥になります。

摘葉したトマトの葉も堆肥の材料になります

トマト作りの過程で随時出る、わき芽や余分な葉っぱ等も一緒にすきこんで分解させ、土に戻してあげます。

摘葉したトマトの葉っぱ

切り返し作業中

切り返し作業
モミガラ堆肥作り3週間に一度ずつローダーを使用し堆肥を切り返しています。その都度出たトマトの摘葉をモミガラに混ぜ込み発酵を促し、約1年かけてじっくり熟成させます。

白い霧状のものはモミガラから出ている湯気です。切り返しの際、空気に触れると湯気が出ます。それだけ、モミガラの温度が高く、発酵している証拠です。

堆肥熟成前と後

右のベージュ色は完熟前の生のモミ殻。左の濃い茶色は十分に完熟したモミ殻堆肥。色が全然違います。

 

1.土づくり〜前作のトマトが終わってから新たに苗を植えるまでの準備期間

土作り

還元土壌消毒(まず、土を休ませます)

トマト終了後トマトハウスの連作障害対策と土壌改良のため、7月~9月の真夏の約1ヶ月間ビニールハウスを密閉し「還元土壌消毒」をしています。

ビニールシート↑通常トマトの残渣を出した後、そのままビニールシートをハウス内全面に敷きます。
灌水チューブ↑水を灌水チューブを通して24時間ぐらい出し続けて密閉します。
水を入れて地温を上げるのは「好気性細菌」を殺し、ナス科につく微生物の密度を減らし、土をリセットするためだそうです。
地温は毎日の積み重ねで少しづつ上がっていきまが、天気が悪い日が続くと細菌が死ぬまで地温が上がりきらないこともあります。それを防ぐために数年に一度シートをかぶせる前に水をためて“代かき”をするようにしています。(←写真は2018年の代かきをした時のもの)

ビニールシート外し

定植(植え付け)日の約10日前に「還元土壌消毒」のビニールシートを外し、定植前準備が始まります。残暑の続く中、汗を拭き拭き、とても重いビニールシートを外すのは一苦労です。

ビニールシート外し

元肥散布

堆肥まきモミガラ堆肥散布
元肥散布元肥散布
元肥とモミガラ堆肥をまきます。
元肥は土壌分析したデータにもとづいて調節された肥料を散布します。土壌消毒をしても涼しい地下に逃げている微生物が上がってきて元に戻ってしまうので、密度が低いうちに「ハイフミンハイブリットG」という微生物と腐食が入った資材も散布し、新たな微生物を入れてバランスを整えます。同時にモンモリロナイト等の鉱物資材を投入し、塩基置換容量の改善をします。
元肥

 

耕うん・鎮圧

耕耘耕うん
鎮圧鎮圧機は古い耕運機を改良して作りました

元肥を散布した後、トラクターで耕します。
その後、土の表面が柔らかいままだと乾燥してしまい、定植したトマトの苗の根っこが十分に張ってくれないので、耕運機を改良した「鎮圧機」で土の表面を踏み固めます。

2.定植(植え付け)〜いよいよトマトの苗を植えます

定植

定植の流れ

植穴を開ける
スタークルを振り入れる
苗が届く
苗を配る
植え付けをして水をたっぷりかける
  1. 株間40センチ畝間180センチでしるしを付け、ドリルを改良した「植え穴掘り機」で穴を開けます。2本仕立ての苗を東西に振り分け誘引するので、1畝2列で、上の誘引線は60センチ通路は120センチになります。
  2. スタークル(コナジラミ対策の殺虫剤)を一振り植え穴に入れます。
  3. 苗を専門に作っている会社からダンボールに入った苗が朝イチで届きスタッフ総出で苗を配ります。
  4. いよいよ定植です。1苗ごとポットから苗を取り出して植え穴に植えつけます。
  5. 植えたらすぐ水をたっぷりあげます。

定植後の1ヶ月でその年のトマトが決まります

定植後1か月でこの先のトマトの性質が決まってしまうため、この時の管理がとても大事になります。しおれすぎると草勢が落ち、細くなってしまいます。木が細すぎると甘いトマトになりますが、長期間の長段栽培はできません。水をあげすぎて木が太くなりすぎる(メタボになる?)と病気になりやすくなります。ちょうどいいバランスを見るのが大変です。

定植後の管理

根がつくまでは手灌水
植え付け後1週間ぐらいのトマト
通路マット
マルチ
摘葉・摘芽始まります
  1. 定植から根が活着するまではホースを回して一本づつ手灌水します。日差しが強すぎるときはカーテンを半分ぐらい閉め、天気を見ながらその日必要な水量をあたえます。
  2. 晴れてもしおれなくなったら手灌水は終わりです。
  3. 灌水チューブを敷き、通路をきれいに均して通路マットを敷きます。(3段目開花、1段目のトマトの実がピンポン玉大になったら、毎日灌水チューブによる灌水が始まります。)
  4. 8〜9月の暑い時期は土中に熱がこもってしまうため、苗の根元に敷くマルチは10月半ばになってから敷いていきます。1段目の色付きが少しでも早くなるようにと、表が白裏が黒の白黒マルチを使っています。
  5. 苗の成長に伴って、誘引ヒモにくくりつけたり、余分な葉や芽をとる作業が始まります。

3.管理作業〜トマトが健康に育つために必要な作業

トマトの生長にともなう基本作業

トマトが日々成長する中で、一つ一つのトマトの木の管理が毎日あります。作業は単純ですが全部で8千本近くあるので、手間はかかります。

摘芽したもの
花房つり
摘芽・誘引作業
  • 摘芽(てきが)テキガ 余分なわき芽を摘む作業です
  • 摘葉(てきは)光合成に充分な葉数以外の葉をとっています。
  • 誘引(ゆういん) トマトは半つる性の植物なので3.5m位上の誘引線にローラーフックをかけ、ひもをたらし、1段目の花の下に結び、トマトにひもを巻いて誘引していきます。
    ずり落ちを防ぐため、ところどころ誘引わっかで固定していきます。
    成長に伴いひもを伸ばして生長点を一定の高さにしていきます。
  • 花房つり 現在作っているトマトの品種は花茎が長く伸びてしまい、トマトの実が大きくなると、重量に絶えられなくなり途中で折れてしまうので、ひもでつっています。
  • 花びらとり 果実に病気が付かないようにします
  • 摘果(てきか) 一つの段(房)には5つの実にするのが理想的なので、形が悪かったり、病気の果実を中心にとっていきます。

受粉作業

ミツバチよりもひと回り大きくてぽっちゃりしてる、マルハナバチによる受粉を行っています。
マルハナバチは暖かくないと活動しないので、活動できず、受粉作業が出来ない時は、「ブンブン丸」(電動振動機)を併用し、なるべくホルモン剤は使用しないようにしています。

マルハナバチの受粉の様子

潅水・追肥〜点滴潅水システムを使用

トマトは乾燥に強い植物なので、あまり水はかけません。極力水を抑えると高糖度のフルーツトマトになりますが、収量が少なくなってしまいます。反対に水をたっぷりあげると、量はとれますが、糖度の低い(甘くない)トマトになってしまうので微妙な調整が必要です。

追肥は有機肥料が入っている液肥を使用。潅水チューブを通して追肥します。
追肥の割合は生長過程によっての判断と、定期的に土壌中の肥料分の測定をした数字を見て判断しています。

潅水チューブは、「点滴潅水」を導入しています。
時間と量を登録して、少しずつ一日に何回もに分けて潅水・追肥をしています。また、寒い時期はトマトの根を傷めないよう地温と同温に沸かした水と一緒に流しています。テキスト

温度・湿度管理

水やり同様自動化され設定温度になると換気窓が開閉したり、寒い時期は暖房機が稼働したりと、人がいなくても24時間の温度管理は大丈夫なようになっています。また日々のビニールハウス内の環境がパソコンに記録されています。

病害虫予防・防除(農薬使用について)

特別栽培農産物・FGAP・エコファーマー

県の認定を受け安全なトマトを作る努力をしています。

エコファーマー認定書
特別栽培農産物
FGAP認定書
  • 2001年 ( 平成13年 ) 福島県知事認定持続性の高い生産農産物(エコファーマー)認定
  • 2002年 ( 平成14年 ) 福島県特別栽培農産物「減農薬・減化学肥料栽培」認定
    使用した堆肥・肥料・農薬名を明記し、あらかじめ登録された農薬しか使用できないようになっています。
  • 2018年(平成30年)ふくしま県GAP(FGAP)認定 「食品の安全」、「周辺環境の保全」、「労働安全の確保」に配慮する取組みをしています。

できるだけ農薬を使わない予防方法

除湿ファン
ホリバーロール(粘着補虫テープ)張り
  • 除湿を心がける

トマトは乾燥を好む植物。対して冬季のビニールハウス内は多湿。どうしても病気は出てしまう環境です。なので暖房機を送風だけにしたり、ハウスの上部にファンを付けていて冬の夜間や雨の日など、寒くて換気ができないときは、ファンを回して空気の流れを作り除湿しています。

  • 「ラノテープ」(黄色のテープ)や「ホリバーロール」(粘着補虫テープ)を張り、オンシツコナジラミなど害虫予防をしています。
  • 病気がでてしまったら、その部分を取ってビニールハウスの外に出して蔓延を防いでいます。

防除(葉面散布)

水槽に液を溜め、ホースで葉面散布をしています。特別栽培農産物に登録してある農薬(特栽認定のページ参照)を、規定の範囲内に抑えて散布しています。

4.収穫〜トマトが赤く実りました!

収穫と出荷について

収穫はほぼ毎日行います

より高い糖度とおいしさを追求するため、真っ赤に完熟したものを1日おきに収穫します。3つのビニールハウスで11月~7月まで収穫します。
移動の過程でトマトが傷まないように、3段重ねまでで、間にクッションに敷物を敷きます。出荷用と直売用に分けて収穫します。

選果場から市場へ出荷

収穫したものは「JA福島さくらハウス部会菊田支部のトマト協同選果場」にて選果・箱詰めし、いわき中央卸売市場へ出荷されています。
箱の中は痛まないようモールドの中敷が敷いてあります。

直売所

1㎏入り袋詰めや、贈答用の箱詰め、それから市場に出せない規格外のトマトなど、その日にとれた新鮮なものを直売しています! (直売所情報はこちらへ)

収穫中の管理

摘芽や誘引など基本的な作業は引き続き行いますが、更に収穫中は下記の作業も必要になります。

遮光カーテン

日差しの強くなる時期(4月下旬ごろから)はトマトの実の烈果や日焼けを防ぐため、遮光カーテンを敷いています。また、このカーテンを敷くことにより、ハウス内の温度調節も可能で、夏場は涼しく冬場は暖かくなります。

下葉摘葉とつるおろし

下葉とり
つるおろし

この収穫時期には、収穫の終わった段の下の部分の葉は、そのほかの部分に栄養が行くようにと通気性をよくするため、すべて摘葉しています。

また、収穫する段が進むにつれて、収穫しやすいように、滑車に巻かれている誘引ヒモを少しづつずらしていく「つるおろし」作業も欠かせません。

5.後片付け〜収穫終了前後の作業

摘芯作業

収穫終了時期の約1ヶ月前に摘芯をします。トマトの木の生長点の芽を取りこれ以上のびないよう生長をとめます。

マルチ・通路マット・灌水チューブ片付け

収穫終了が近づく6月下旬ごろから、通路マットやマルチなどの敷物を片付け、誘引ヒモを切っていきます。

 灌水チューブ片付け

収穫終了日にハウスを密閉

トマトの収穫が終了したらすぐ片付け作業に入ります。

まず、樹の片付けのため根っこを抜き、晴れた日を狙ってハウスを密閉します。
ハウス内をサウナ状態にし、病害虫を死滅させると共に、トマトの樹をカラカラに乾燥させます。

晴れていれば50℃ぐらいまで上がります。天候によってそれ以上あがることもあります。

まる1日後、トマトの樹はカラカラに。葉に触ると粉々になってしまう程です。

つる片付け

トマトの木(つる)をヒモや支柱から外し片付けます。
トマトの木はカラカラです。以前は、トレンチャーで深耕しトマトの樹をハウスの中に埋めていましたが、2007年よりトマトの残渣は外に出しています。(トマトのつるも1年間かけて堆肥化され、直売用の野菜の畑に入れています。)

その後ハウス内に灌水チューブとビニールシートを敷き、「還元土壌消毒」という方法で、来期のトマト作りに大切な土を休ませる約1ヶ月の期間に入ります。
そしてまた新たなサイクルへと引き継がれ、トマト作りが始まります。